壽稲荷(ことぶきいなり)本殿は、渋谷2丁目の日本薬学会 長井記念館の敷地の中に祀られています。ビルの中庭に在るため一般の方の目に触れることはありませんが、江戸時代に信州高島藩諏訪氏下屋敷の屋敷神として勧請されたと伝えられています。
本殿は小規模な建築ながら、身舎(もや)の壁面には牡丹・麒麟・獅子の彩画と唐破風(からはふ)の琵琶板には鳳凰が描かれています。特に当初の彩色を留める身舎柱(もやばしら)、台輪(だいわ)他、向排(こうはい)正面の軒桁(のきけた)ならびに飾り金具に、徳川氏の家紋である三つ葉葵の家紋が見られます。
本建築は、密度高く装飾され、十七世紀に遡る建築として、壽稲荷本殿と石造手水鉢(せきぞうちょうずばち)は、平成21年 渋谷区の指定有形文化財に指定されています。
毎年二(に)の午(うま)の日に、日本薬学会の主催で、多くの薬学関係者や近接町会員等を招いて、金王八幡宮の神職による神事を行っています。